日本ALS協会神奈川県支部
髙野元
1965年生まれ。
ブログをやっています。
http://blog.gentak.info/
「新しいALS観」を知ったことで、前向きな展望を持つことができた。
私は2014年の9月末に検査入院したところ、筋萎縮性側索硬化症と診断されて告知を受けました。ALSのイメージは、かなり進行した寝たきり状態をイメージで記憶している人が多いと思いますが、発症はごく僅かな身体の変化から始まり、それが少しずつ広がっていきます。また、現在では人工呼吸器をつけることで呼吸系の筋肉が動かせなくなっても、これを回避し、生を全うすることができるようになりました。これを「新しいALS観」と呼ぶそうです。ALSへの対応が知られる病院のひとつに、都立神経病院があります。脳神経系の疾患を専門に扱う病院で、この「新しいALS観」に基づいて、治療を行っています。私は「新しいALS観」を知ったことで、前向きな展望を持つことができました。
難病は行政支援が不十分、患者会から得られる情報も多い。
ALSなどの難病患者の数はそれほど多くなく、行政の支援や医療介護側のノウハウも十分とはいえません。そんな環境では患者関係者の連帯は非常に大切だと痛感しています。体が動くうちに、支援体制を築いておくことをお勧めします。日本ALS協会は30年ほど前に発足し、患者の療養環境を整えるべく活動してきました。そうした先人の努力の恩恵をいろいろな活動の中で、受けることもできますし、自らが患者会に貢献することもできます。
神奈川県支部では、相談会を開催しています。
現在、私は神奈川県支部(以下、支部)の活動に参加しています。毎月第1土曜日に、横浜駅近くの西区福祉保健活動拠点(フクシア)にて役員会を開催しています。岸川紀美恵支部長をはじめとする役員・准役員が毎回10名程度集まっているのですが、この役員会の前に患者家族相談会を開催しています。毎回2〜3組のご家族や介護関係者が参加され、いろいろなことを相談されます。
- 病院にて告知を受けたばかりで、受けられる医療や介護にどのようなものがあるのかわからず、今後の生活に不安を抱えている方
- たとえば、飲み込みの機能がおちて来て食事形態をどうすればよいのか、といった療養生活の具体的な課題をお持ちの方
- ラジカットのように認可されたばかりで、医者も患者も情報が不足している最新治療について情報を収集したい方、
- 他の難病関連団体でALS患者の事例を調べている方、
- 介護事業所にお勤めの方でALS患者の事例を調べている方、
このような相談は、まずは電話やメールで支部の連絡窓口にいただくことが多いのですが、できるだけ、相談会に誘導するようにしています。これは、相談者が多くの役員と質疑ができるようにしたいという考えからきています。相談会は、情報交換の場であるだけでなく、患者家族が気の済むまで「只々つらい」という話を聞いてもらえる場所であることを大切にしています。二時間程じっと話を伺って、ご相談者が明るい顔になって帰られるとうれしくなります。 相談会は、個別相談ではなく他の患者さんも一緒のオープンな場にしています。自分の話だけでなく他の患者さんの話も聞けるので、患者同士が知り合う機会にもなっています。
相談者の中には何度も通ってくる方もいて、時にはアドバイス側に回ることもあります。先輩患者は、病院やそこの努めている先生の特徴、また社会保障に関する行政手続きに詳しいので、病院・医師や行政とのコミュニケーションの方法などに対するアドバイスをもらえる場合もあります。先日は、介護施設の方がALSの介護実態を聞きたいということでお見えになりました。さすがに一回で全てを語ることは難しく、継続的に相談会に来ていただくようお願いしました。患者会と介護事業者が連携することで、在宅ケアの質が上がっていきます。
支部の年間活動で注力するテーマは、日頃のお問い合わせや相談会から見えてくる課題から選ばれます。2015年度は、「重度障害者の入院時介護付き添い支援制度の成立」と「喀痰吸引の第3号研修の実施」に力を入れました。ぜひ、お近くの日本ALS協会支部にお問い合わせいただき、一度、会に足を運んでみてください。
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