治療の進め方

患者からみたALS


ALSという病気
謎が多いALS、まず知ることからはじめよう

佐賀県支部支部長
中野玄三

中野玄三

ALSという病気は、謎が多い病気です。

最初に現れる症状も人それぞれで、進行具合も様々で謎です。
また、発症年齢も性別もそれぞれ違います。

それに加えて、生活環境と「ALSという病気」の捉え方が人それぞれ違います。
こういう事が、ALSをより難しい病気にしていると考えています。

難しいと言っても、僕はALSを発症して20年以上の療養生活の経験があります。
このALSを乗り越えた者として、少しだけ考えを書かせてください。

医学書を開いてALSのページを読むと、本当に人生を諦めたくなります。
たぶん、多くの人も同じように思うはずです。僕もそうでした。
「もう、人生終わった」と思った瞬間があります。

しかし、医学書をよくよく読むと、全員が同じ様に進行するとは、どこにも書いてないのです。

患者は、ここに未来を見つけるべきです。

僕はALSの診断が確定した3週間後に、ある有名な医者に会いに行きました。
何とかして欲しかったのです。

その医者は、僕にこう言いました。
「今の医学でも、まだ解らない事が沢山あります。何が起こるか分からない」と。

この時に僕は「何が起こるか分からない」という言葉に未来を見つけました。

また、同じ時、余命いくばくもない乳癌の患者さんと出会ったのです。
その方は、入院していた僕の身の回りのお世話をしてくれました。
その方が亡くなる2ヶ月前、僕のALSをこう言ったのです。

「いいわね~」と。

つまり、「呼吸器を着けたら死なないよね」という意味です。

僕は、その方の魂の呟きを聞いて「ALSという病気」のイメージが変わりました。
同時に「ALSという病気」は、たいした病気ではなくなったのです。

現在、僕は人工呼吸器を着けています。
でも、恵まれた環境の中で「病人ではなく、生活者として」笑顔で暮らしています。
そういう中で、6年前に2つ目の会社を設立し、その会社の代表として、明るいスタッフと一緒に、にぎやかな日々を過ごしています。

そうは言っても、多くの方から「喋れなくて動けない体なので、不自由しているはず」と思われているらしいです。
確かに僕は、喋れなくて動けません。
でも、そんな事はALSを乗り越えると決めた時から想定内にしていました。

それで、困らないように、また我慢や不自由をしなくてもいいような方法を考えたのです。
今、「手となり、足となって」僕の代わりに動いてくれるヘルパーさん達が周りにいます。
全員、心を許せるヘルパーさんで、全てに対して動いてくれます。

必要ならば24時間側にいますし、入院時は病室でも検査室でも24時間離れずに付き添います。
こういうヘルパーさんのおかげで「喋れないストレス」も「動けないストレス」もなく、日々の生活も皆さんに見せたいくらいに、普通に過ごしています。

そうなのです!
ALSは乗り越えられるのです。

ALSを乗り越えるために重要なことは、最初に自分の病気(ALS)を知ることです。
なぜなら、これから起こる事を想定内に出来るからです。
僕が思うに、このALSは悪い面ばかりではありません。
それは、まず、ただちに死ぬ病気ではないということ。
これは有り難いことです。

そして、自分の体が、どんな状態になるのかを予測出来る病気だということ。
これは見方を変えれば、先回りして手が打てる病気に変えられるということです。
先回りが出来ると、自分の将来像を頭の中で描き、そこから逆算して「今、自分がやるべき事」が分かります。
これも有り難いことです。

しかし逆に、自分の病気(ALS)を知ろうとしないで、棚上げにすると、全てが想定外になります。

「こんなはずじゃなかった」と、ここでボタンの掛け違いが起こって、数年後も尾を引きます。そして、やることなすことが全て後手になります。

これは、とても不幸なことだと僕は考えています。

やはり、最初に自分の病気(ALS)を知ることは、極めて重要なことです。
受容とは違います。
受容なんかしなくていいので知ることです。
自分の病気(ALS)を知ると「未来がある病気」に変えられます。

今の時代、本人とご家族が望めば、在宅で呼吸器を着けて暮らすことは難しくありません。
ALSは人生の終わりではなく、ずいぶん乗り越えやすい病になったと感じています。
いや! 乗り越えなければいけない病になりました。

近い将来、ALSは治る病気になるはずです。
だから、それまでは何としても、乗り切らなくてはいけません。
僕は本気でそう考えています。

最後になりますが、現在、僕のALSは進行が止まっています。
進行が止まって10年が経ちましたが、大学病院の医師も「止まっている」と言います。
というより、むしろ元気になっています。

「何かが起こった」のでしょう。

僕は、こういう事は起こりうる事だと考えています。

なぜなら、ALSは謎が多い病気だからです。


ALSという病気
子ども向けにALSを説明すると…

日本ALS協会理事
酒井ひとみ

酒井ひとみ、日本ALS協会理事

これは、自分の子供に病気の説明をするときや、子供の友達にどうして車いすになっちゃったの?と聞かれたときによく、自分なりに考えて説明していたことに少し付け加えたものです。

当時まだ、保育園に通っていた子供たちに説明していたものなので、少し言葉が足りないかもしれませんが、皆さまのお力になれれば幸いです。

身体を動かすのに必要とされている脳から出ている信号が、普通の人は青なのに対して、ALSにかかるとその信号は、徐々に黄色に変わり最終的に赤に変わります。感覚や頭の思考回路は侵されることはありません。それも、最初になる部位も、進行の速度も人それぞれなのです。

それでも行きつくところは同じで、最終的には 呼吸器をつけなければ死を迎えます。多くの患者さんは自分の家族の介護負担のことや間違った情報などで、自分の気持ちとは、逆に呼吸器を付けずに亡くなっていきます。

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